書評『世界のエリートがIQ・学歴よりも重視!「レジリエンス」の鍛え方』久世浩司 著
<引用>
『刺激と反応の間にはスペースがある、そのスペースをどう生かすかが、私たちの成長と幸福の鍵を握っている』
私たちは失敗をしたときや困難な状況に直面したときには、ネガティブな刺激を感じます。その刺激が自動的に反応を生じさせるのが、刺激と反応のメカニズムと言えます。
私たちは、想定外のネガティブな出来事が起きると、ほぼ自動的にネガティブな反応をしてしまいます。これを「オートパイロット」と言います。飛行機の自動操縦のように、不快な体験による刺激が、自動的にネガティブな感情や役に立たない反応を引き起こしてしまうのです。
困ったことや予想外のことが起きたとき、私たちはオートパイロットの思考モードに入って自動的に反応をしているように思えます。しかしこころの内面を観察すると、なぜこのようなことが起きたのかを自分自身に説明をする思考のプロセスがあることがわかります。その脳内のプロセスが瞬時に起きるため、自分では認識できていないだけなのです。
自分への説明内容は、過去の経験によって形成されます。それを信念や意見、解釈、または一般的な言葉として「思いこみ」と言います。
この思いこみは人によって異なるため、同じ体験をしても「色眼鏡」を通して現実を解釈することになります。その結果として、感情や行動といった反応に違いが生じるのです。人によって色眼鏡が異なるため、同じ体験を見てもある人にはポジティブな明るい体験に見え、別の人にはネガティブな暗い体験に見えてしまうことがあります。
認知療法を開発したアルバート・エリスはこの思考プロセスを「ABCモデル」と名付けました。
・A(adversity=逆境)とは、困ったことが起きたその状況を表します
・B(belief=信念)とは、その出来事が起きたのかの自分への説明を表します
・C(consequence=結果)は、反応としての感情や行いを意味します
ABCモデルは、何か困ったことが起きると、その刺激や情報が私たちの信念・思いこみの 「色眼鏡」を通して解釈され、その結果何らかの感情や行動が生まれるきっかけとなる一連の思考・感情・行動パタ ーンを示しています。
つまりAがBを引き起こし、BがCを引き起こす。このモデルを活用すると、失敗やトラブルに直面したときの自分の内面に瞬時に起きているプロセスが明確になります。
<書評>
事実としての出来事と、それに対して沸き起こる感情は別のもの。受け止め方は自分で決めることができる。とても示唆に富む言葉だと思いました。
ある出来事に対して、「最高!」と思うか「最低!」と思うか、それは自分自身で選択するものだということです。
自分の身に起こった何かに対する自分の感じ方については一定のパターンがあって、そのような認識の仕方を「色眼鏡」という例えで表現されています。
自分の思考パターンが「眼鏡」を通して見ているものであるというのであれば、度の調整やレンズ交換だって可能だし、眼鏡そのものを取り替えることだってできるわけです。
そうであるならば、自分が「こうありたい」、「このような考え方をできるようになりたい」という尊敬できる人たちの眼鏡を借りてきて、強く意識して自分の鼻の上に乗せる練習をしていれば、そのうち、その眼鏡、つまり尊敬する人達の思考パターンも、だんだんと自分の顔形に似合って馴染んでくる、自分自身のものとして身につけることが可能なのではないでしょうか。
自分の見ている世界は、世界の中の砂つぶよりも小さな、ごくひとかけらに過ぎない思い込みです。客観的に、相対的に自分自身を捉えられるようになるためには、やはり多くの人の考え方に触れることが大切だと思います
まずは、身の回りの出来事に対して すぐに結論を下すのではなく、「一呼吸」おいて、本書に書かれているABCモデルのように、Aの逆境とCの結果の間のBの部分、自分の信念について見つめ直してみることが必要だと思いました。
そして今度はその自分の信念のスペースに、沢山の人や本から学んできた、他者の考え方を「介入」させてみるのです。「あの人なら、こんなことがあった時にこう考えるのではないか?」と。
そうすれば、自分の中の荒ぶる感情の嵐も、自ずからおさめることができるようになってくるのではないでしょうか。
こうして、ネガティヴな感情にとらわれる時間が、1日の中で相対的に減少してくれば、それはきっと成長や幸福へと繋がってくる道になるだろうと思いました。
特に子供に対して「怒らないようになる」、というのは私の今の課題でもあるので、重点的に取り組んでいきたいと思います。
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