書評『幸せな死のために一刻も早くあなたにお伝えしたいこと』中山祐次郎 著
<引用>
私は、この「MEMENTO MORI」をこんなふうに考えました。
「死を想え。死を想うことで今生きていることを実感し、喜び、自身の生き方を今一度考えよ」と。
あなたは、タイムリミットのせまったウルトラマンみたいなものかもしれません。タイマーが目に見えないだけで、そしていつ鳴らされるかわからないだけで。
「自分の仕事はこれでよいのか、自分の生き方はこれでよいのか」
本気の、真剣の自問自答をしてください。自分に問いかけてみてください。そしてそこから出てきた本当の本音に、少し勇気を出して耳を傾けてみませんか。
この、こころからの自分の本音に従って生きることができたなら、もし少しでもそうできたなら、ほんの少し、最期のときの無念が減るのではないか。私はそう思います。
この現代という、情報とモノがあふれた混沌とした時代で、「お金持ちになりたい」とか「偉くなりたい」といった欲は、たしかにあなたを成長させ競争力を上げるかもしれません。社会全体としては、それでさらに先に進むのかもしれません。でもそれは、「幸せ」とは全く無縁のものでなはないか。私はそう思います。
少しのことで満足する。充足する。幸せを感じる。きょうはいつもの仕事がいつも通りできた幸せ。お昼ご飯を抜くほど忙しくなかった幸せ。仕事帰りに近所のお惣菜屋さんで、五〇パーセント割引のから揚げが買えた幸せ。
きょうも歩いて、電車に乗って通勤できた幸せ。仕事があり、家族がいる幸せ。雨が降っても、雨に濡れずに帰れた幸せ。友人と、恋人とメールができた幸せ。
歩ける幸せ。服を着られる幸せ。自分でかばんが持てる幸せ。ご飯が食べられる幸せ。外に出て、いい空気が吸える幸せ。きれいな夕日を、見る幸せ。
こんな幸せを感じてください。
当たり前を、幸せに感じてください。
みんな、きっと知っているのです。幸せとは、大きな仕事を成し遂げたときでも、運命的な出会いをしたときでもなく、ある日の日常のなんでもない生活の中にそっと隠れているということを。
<書評>
時々、見かけますが「MEMENTO MORI」(メメント・モリ)とはラテン語で「死を想え」という意味だそうです。
著者は大腸がんの手術を専門とする外科医として、日々、多数の患者さんのいのちの現場に向き合ってこられた方です。
がんという病気は、ある日突然、何の前置きも、こころの準備をすることもなく、余命を宣告されることになる場合もあるそうです。
仮に、いきなり余命を宣告されるようなことになった時、私たちは何を考えるでしょう。自暴自棄になってしまうかもしれません。恐怖のあまり泣き出してしまうかもしれません。
筆者が教えてくれるのは、「人は誰でも、いつ、どのようなことで死ぬかは分からない。ただ、死ぬ時には悔いを残すことができるだけ少なくなるように、今生きていること、当たり前の生活を送ることができていることの幸せを、精一杯噛み締めよう」ということです。
この本のような、日常ではあまり考えないような、死を取り扱う話と出会った時、私はいつも背筋が伸びる感じがする、というか、心の姿勢が正されます。深く自分のあり方を見つめなおすきっかけをもらえます。他にも、戦争に関連した本を読む時でもそういうことがよくあります。中には劇薬のように激しく心が揺さぶられるものもありますが、あえて時々読むことで「自分の緩んだ精神を引き締めてもらえる」という効果が望めます。
私たちは普段、「明日がある」ということを当たり前だと考えています。今日できなかったことは、また明日やればいい。そう考えます。でも、その明日があるという保証はどこにもありません。これまでの人生では「明日」がありました。もしかすると、それは「奇跡」に近いことだったのかもしれません。でもこれからその「奇跡」がいつまで続いてくれるは分かりません。
そう考えた時、これまでの自分の人生のあり方や行動は、果たして「精一杯の全力を尽くした、日々を味わい尽くした」ものだったと言いきれるのかどうか。私は残念ながら言えませんでした。
「昨日があった」奇跡、「今日を過ごせた」奇跡を感謝して、噛み締める。「自分もいつか死ぬ」ということを考えることで、自分の身の回りの人やモノを「有難い」と思う感情が湧き上がってきます。「今日という当たり前」を精一杯生きようという真摯な心が生まれます。
そう、「明日」が明日も来てくれるのかは分からないのです。だからこそ、今、確かに自分の目の前にある「今日」を大切に生きる。五感を通じて取り込まれる世界の中に浸りきる。自分の中の感情を味わい尽くす。恥ずかしがらずに「感謝」を伝える。そんな1日を生きていくのです。できればそんな1日を、命の灯が消える時まで積み重ねていければ、と思うのです。
<今日の読書を行動に変えるための
個人的チャレンジシート>
1.この本を読んだ目的、ねらい
・自分のあり方、心に真剣に向き合うきっかけを得ること
2. 読んでよかったこと、感じたこと
・死について考えることで、今日という日を過ごせたことの有り難みを感じることができた
・自分の生きる姿勢を正してもらえた
3. この本を読んで、自分は今から何をするか
・日々の「当たり前」の中にある幸せを大切に、しっかりと味わっていく
・感謝を伝える
・「今日」を精一杯、生きていく
4. 3か月後には何をするか、どうなっていたいか
・自分が生きていることに日々感謝することを忘れず、周りの人達に貢献できる人間になっている
・行動を先送りをしないようになっている
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