書評『シンプルに考える』森川亮 著
<引用>
「スピード」×「クオリティ」──。この掛け算を最大化することが、あらゆるビジネスを成功させる鉄則です。
どんなにクオリティが高くても、スピードが遅いと勝機を逃す。かといって、スピードがいくら速くても、クオリティが低ければ価値が低くなってしまう。双方が兼ね備わったときにビジネスは強いものになるのだと思います。
しかし、これが難しい。クオリティを追求すれば、どうしても時間がかかる。スピードのためには、ある程度クオリティを妥協しなければならない。その両者のバランスをどう考えればいいか。
僕もかつては、エンジニアとしてプロダクト開発に携わっていました。当然、クオリティにこだわりました。
しかし、その結果、本当の意味でクオリティの高いものを生み出すことができたのかと聞かれれば、「NO」と言わざるを得ません。なぜなら、必ずしもユーザーに受け入れられたわけではないからです。
どんなに高品質でも、どんなに機能が豊富でも、ユーザーの求めているものと違えば、それはクオリティが低いということ。結局のところ、それはつくり手の自己満足に過ぎません。そのためにムダに時間をかけて、スピードを犠牲にしてはならないのです。
大切なのは、ユーザーが求めていることの本質を知ることです。そして、自己満足を排して、その本質に応えることだけに集中する。それが、最高のクオリティを最高のスピードで実現するために、最も重要なポイントなのです。
商品にとって、いちばん大切なのはクオリティです。しかし、その意味を取り違えてはいけません。クオリティを高めるために最も重要なのは、ユーザーが求めているものの本質を精度高く把握すること。そして、そこに集中したときに、「スピード」×「クオリティ」が最大化されるのです。
<書評>
スピードと品質は両立が不可能なトレードオフのものなのかと考えた時、必ずしもそうではないように思います。
時間をかければかけるほど、仕事の完成度が高まるのか、と言えば、もちろんある程度までは投入した時間に比例して高められると思います。しかし、そこから先は、かけた時間に対する品質の向上の割合が緩やかになってくるように思われます。
品質は間違いなく高まっているのだけど、「微差」でしかなくなるという領域です。
それならば、もっと前の段階、つまり、ある程度のところまで仕上げた時点で、上司や顧客の確認を受けてフィードバックをもらった方がスピードとのバランスが取れるでしょう。
色々な本を読んで比較すると、この、「ある程度」の「仕事の仕上がり具合」は、だいたい60%〜80%くらいの範囲であることが多いように思います。
その「60%~80%程度の間の仕上がり」までできたと思ったら、一端自分から手放して、次に進めてみる。これ以上のこだわりは自己満足の領域、と割り切ってしまった方が良い気がします。その方が仕事もサクサクと進みます。
もちろん自分の考える出来が80%でも、それが上司の求める基準を満たさずに、やり直しを命じられることもあります。それであっても提出のスピードは急いだ方が良いです。納期ギリギリまで粘って提出した後で、修正項目がたくさん指摘されて返ってくると、それを直すのも大変です。下手をすると納期に間に合わなくなってしまう恐れもあります。
そういう意味では、当たり前ですが、上司や顧客の要望するものを、事前にちゃんと聞いて確認しておくことが大切です。
製品の品質にはJISなどの規格に基づいた、誰が見ても分かる「客観的な基準」というものも、もちろんあります。(ストレスを印加した状態で何時間の使用に耐久したとか)。
しかし、極端な例ですが、1億個に1個しか不良品がでないような製品を作っていたとしても、その1個の不良品が偶然、ある顧客の手にわたってしまったら、その顧客にとっては、その製品は「品質が非常に悪い」ということになるでしょう。
つまり、品質は結局のところ顧客の「主観に依存する」ものだと思うのです。
だからこそ、顧客の求めるものは何か、その本質の部分を、可能であればできるだけ事前に話し合い、詳細まですり合わせをしておくことが求められるのです。
この最初の部分が、後々の仕事のスピードと品質の両立に大きく影響を与えることになると思います。
顧客の求めているものの本質を精度良く把握する。顧客視点に立って見つめなおしてみる。それが簡単に出来たら苦労しない、という話もありますが、それでも「自分だったら」、というエゴを排する意識を持ちつつ、顧客は心の奥で何を求めているのかの「仮説」を立ててみること、そしてその「仮説」を検証して確かめていくことが、数値では測れない顧客満足という本当の品質の向上、品質の作り込みにつながってくるのだと思います。
<今日の読書を行動に変えるための
個人的チャレンジシート>
1.この本を読んだ目的、ねらい
・ シンプルに考える方法を知る
・ 自分の中にないアイデアを取り入れる
2. 読んでよかったこと、感じたこと
・ビジネスを成功さえるためには、ユーザーのニーズに応えること、というシンプルな本質を知ることができた
・成功を捨て続けることが成長につながる、という考え方を知ることができた
3. この本を読んで、自分は今から何をするか
・「ユーザーのニーズに応える」という本質を追求するために、仕事において顧客・上司とのコミュニケーションを今よりも密に行うようにする
・品質とスピードの向上のために、顧客の求めるものの本質に対する「仮説」を立てて検証する
4. 3か月後には何をするか、どうなっていたいか
・過去の成功や失敗にとらわれず、どんどん新たなチャレンジを行えるようになっている
・顧客の感じる品質を最大化できる努力を当たり前にできるようになっている
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