書評『1440分の使い方 ――成功者たちの時間管理15の秘訣』ケビン・クルーズ 著
<引用>
一日は1440分
あなたがよほどの変わり者でなければ、特に貴重なものとして配偶者や子ども、友人、健康、お金、そして時間を挙げたはずだ。大成功した人々も同じようなものを挙げる。違うのは、時間をすべての中で最も重要な項目と位置づけていることだ。
時間はどうだろう。失った時間は決して取り戻せない。
時間を消費してしまったから追加で手に入れよう、というわけにはいかない。時間は買うことも、レンタルすることも、拝借することもできないのだ。
さっきの鼓動は、決して戻ってこない。さっきの呼吸も、決して戻ってこない。
その思いを生活の中で実行に移しているだろうか?
あなたの人生を変える魔法の数字、それが1440だ。是非試してみるといい。紙に「1440」と大きく書いて、オフィスのドアに貼りつけるだけだ。ドアでなくても、テレビの下、パソコンのディスプレイの隣など、一番目につく場所ならどこでも構わない。そうやって、極めて限られた、非常に貴重な一日の時間を思い出すのだ。
大成功した人々は、時間の流れを感じている。1分に秘められた可能性を知っている。
最も重要なタスク(MIT)を見極める
簡単に言えば、最も重要なのは、何に専念すべきか、そしてどうやってそれをやり遂げるかが明らかになっていることだ。私の言葉で言い換えると、最も重要なタスクすなわち「MIT(Most Important Task)」を常に把握していることである。
目標設定とは要するに、自分にとって最も重要なことを理解し、その達成に目下最大の影響を与えるであろう活動を特定することだ。
最大の目標が決まったら、次は、その達成につながる活動を洗い出す。そしてさらに、その中でも今この瞬間に最も重要な活動を特定する。
「目標に近づくために、目下、最も重要なタスク(MIT)はどれか?」
MITが決まれば、スケジュールを決めるのがぐっと楽になる。最重要事項が明確になっている以上、よほどの理由がないかぎり、それに時間を割くべきだからだ。
MITを決めたら、それをスケジュール化して、一日のできるだけ早い時間に入れる必要がある。
デューク大学のダン・アリエリー教授(心理学・行動経済学)は、ほとんどの人は完全に目覚めてからの2時間が最も生産的で、最も認知機能が高まるとし、インターネット掲示板レディットの「何でも質問して(Ask Me Anything)」というスレッドで、次のように答えている。
人は一日の中で最も生産的な2時間を、たいして認知能力を要さないこと(ソーシャルメディアなど)に費やす傾向がある。これは実に残念な時間の使い方だ。この貴重な時間帯をきちんと活かすことができれば、ほとんどの人は、今よりもはるかにうまく本当の望みを達成できるというのに。
一日の始めは、ほとんどの人にとって最も認知能力が高まる時間帯であるだけでなく、想定外の用事や緊急事態が発生しにくい時間帯でもある。
最も重要なタスク(MIT)を特定し、毎日、何よりも先に取り組む。
1.この本はどんな本か?
生産性を高める時間管理の方法について書かれた本です。起業家や、億万長者、オリンピック選手、成績がオールAの学生など288人への取材と調査研究の結果をまとめてノウハウとして提供されています。成功している人々が、「時間」に対してどのような考え方を持っており、また「時間」をどのように使っているのかを学ぶことができます。
早起き、先延ばしの克服、メールの方法、ノート術、会議、To doリスト、健康管理などさまざま項目について言及されています。「これは!」と思うものだけでも実際に取り入れてみると、その効果が実感できます。
今回は「時間が最も貴重かつ最も希少な資源であること」を認識すること、そして、「最も重要なタスク(MIT)を特定し、毎日何よりも先に取り組むこと」について書かれた章から引用しています。
2.Most Important Task
早起きの有効性は色々な本や人によって言及されています。本書でも早起きの効能について1章を割いて説明されています。
でも、とにかく早起きをしさえすれば良い、と述べているわけではありません。早起きをして、この、朝一番の誰にも邪魔されにくい時間帯を、「目標の実現のために一番大切なこと(Most Important Task)」を実行するために使おう、と述べられています。
この考え方はとても大切だと思います。まず、(睡眠不足の状態でなければ)朝というのは脳も体も休息を取った後なので、頭の回転が良くなっています。だから仕事でも勉強でも捗ります。
そして、「大切なことを1日の最初に片づけてしまう」ことで、夜眠る前に「あぁ、今日も〇〇ができなかった、、、」と後悔することもなくなります。
緊急、かつ重要なタスク、いわゆる「第一領域」に属する活動は、その緊急性から、意識せずとも昼夜関係なく、取り組めるでしょうし、また取り組まざるおえないでしょう。
その一方で、緊急ではないけれど重要なタスク、いわゆる「第二領域」に属する活動の場合は、日々の仕事やプライベートの予定をこなしていると、ついつい、後回し、先延ばしにされがちです。
でも、この「第二領域」のタスクこそが、短期的ではなく、中長期的な自分自身や組織の成長を考えた場合は最も大切なことになります。
問題はこの「第二領域」のタスクを行うための時間をどこで確保するか、ということです。これは、「今日抱えている仕事を全て片付けて、それで残った時間があれば、そのタイミングで『第二領域』のタスクを行う」、という考え方では、永久にその時間はとれないでしょう。なぜならば、仕事は得てして、制限時間ギリギリ一杯までかかってしまうことが多いからです。
だからこそ、一日の始めの時間、かつ、一日の中で自分の頭のパフォーマンスが最高の状態の時に、この「第二領域」のタスクに取り組もう、そのように「時間を天引き」してやろう、ということになります。
これは精神衛生上も非常に良いことになります。何故ならば、朝一の段階で、その日に最もやりたいことは文字通り「片がついている」からです。残りの時間は、楽しく、余裕を持って過ごすことができるでしょう。
引用した部分によると、朝起きてから「最初の2時間が勝負」だそうです。メールやSNSのチェックは「一端、後回し」にして、今後の人生をより良い方向に向けていくために、自分自身が取り組むべきことに取り組みましょう。
もし、一日に2時間を「目標実現のために一番大切なこと」に使えたとしたら、単純計算で一年で、
2時間 x 365日 = 730時間/年
もの時間を投入できることになります。これだけ「第二領域」のタスクをやり続けることができたなら、今現在とは違った風景が見えるようになっていることは間違いありません。
私は「夜更かし」してしまう習慣からなかなか抜け出せずにいました。
しかし、「目標実現のためのMITを朝一番でやり続ける」ということを強く意識してから、一分、一秒でも早く寝ようという気持ちが生まれて、仕事などでイレギュラーな対応が必要な場合を除いて、夜更かしの回数はぐっと減るようになりました。
そして集中力の高い快適な朝を迎えることができています。
3.いつ、何をやるか?を「決める」
上でご紹介した部分に加えて、本書から私が「これはいいな」と思って最初に取り入れてみたのは以下の2つです。
・3210メール術
・To Doリストをやめる
順にご説明しますね。
「3210メール術」は、メール処理の時間を一日「3回」(朝・昼・晩)に制限し、タイマーを「21分」に設定します。そして、その時間内に受信箱のメールを「0」にしてしまう、というものです。
これは、個人的に非常に効果がありました。
メーラーを立ち上げっぱなしにしていると、ついつい、何か新着メールが来ていないかを確認してしまいます。そして、特に急を要する要件ではなくても、一端、自分が現在進めている仕事の手を止めて返信を書く、ということが多々ありました。
あるいは、返事を書かないといけない重要なメールではあるものの、考えたり、人に相談することが必要なため、すぐには返信ができずに、受信箱に長期間放置されたままのメールが積み重なっていました。
ところが、この「3210メール術」を取り入れて、メールを見るのは一日3回だけと「決めてしまい」、それ以外はメーラーのソフト自体を立ち下げてしまいメールを見ないようにすると、他の仕事に集中できるようになって生産性が上がったのです。
また、メールを開封したら「21分」という制限時間内に全て処理すると「決めてしまう」ことで、結果的にメールの処理スピードも上がりました。
もう一つの「To Doリストをやめる」の方について。
本書ではTo Doリストのことを「消えることのないウィッシュリスト」と呼んでいます。(言いえて妙だと思いました)。その理由はクリアしたいタスクを書き連ねただけで、いつになったら全部終わるのか、という具体的な計画がないためだと説明しています。
では、To Doリストに書いているタスクは、どうすれば完了することができるのでしょうか。
その答えとして、「重要なことは全て、やる時間を決めてスケジュール表に入れておく」ことが提案されています。
さらに、「重要な項目には一日のうちできるだけ早い時間を割り当てる」、「目標は取り下げない」、「時間を確保した予定は、診察の予約だと思って対処する(つまりそれくらい重要だという意識を持つ)」ということが述べられています。
To Doリストを書かれている方なら必ず経験があることだと思いますが、緊急なこと、すぐにできることはTo Doリストに書いたそばからどんどん片付いて消していくことができます。しかし、手間のかかるタスク、心理的負担の大きいタスクなどは、何か月もTo Doリストの定位置を占めたままで、カビが生えても、苔むしても、「動いてくれない」のです。
この原因の一つには、そのタスクをこなす時間を「決めていない」ことがあるでしょう。
私はこのことを知ってから、日常の家事のような細かい雑用まで、全てスケジュール表に記入しておくようにしました。
もちろん、苔むしたタスク、カビが生えたタスク(だけど自分の目標実現にとって重要なもの)も、しっかりとスケジュール表に時間を確保しました。
すると、あれだけ長期間居座っていた大きな石のようなタスクが、ゆっくりとではありますが、転がり出すようになってきたのです。
要は「そのための時間を確保して」、「その時間はそれだけに集中して取り組むと決めた」ことが、動かなかった石を動かすテコの役割を果たしたのだと思います。
まだまだ本書からご紹介したい項目はあるのですが、長くなりすぎるので、残りは是非、本書を読んで確かめてみて下さい。2019年2月時点では、「kindle unlimited」 や「prime reading」でも読むことができますよ。
4.まとめ
・ 時間が最も貴重かつ最も希少な資源であることを認識する
・ 最も重要なタスク(MIT)を特定し、毎日何よりも先に取り組む
・ 重要なことは全て、やる時間を決めてスケジュール表に入れておく
<今日の読書を行動に変えるための
個人的チャレンジシート>
1.この本を読んだ目的、ねらい
・様々な成功者から生産性を高める方法を学ぶ
2. 読んでよかったこと、感じたこと
・すぐに使えて、かつ実際に有効な方法を多数入手できた
3. この本を読んで、自分は今から何をするか
・良いと思った項目は模倣して完全に自分のものとする
4. 3か月後には何をするか、どうなっていたいか
・朝いちばんにMITを片付ける生活が継続できて、ストレスのない快適な毎日を過ごしている
・目標実現へのマイルストーンの一つに到達している
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