書評『エッセンシャル思考 最小の時間で成果を最大にする』グレッグ・マキューン 著
<引用>
私たちは、予測不可能な世界に住んでいる。
確実に言えるのは、世の中に確実なことなどないということだけだ。だから、何が起こってもあわてないように、あらかじめ備えておいたほうがいい。つねにバッファをとっておくのだ。バッファ(緩衝)とは、2つのものがぶつからないようにするためのものを言う。
非エッセンシャル思考の人は、条件に恵まれたケースを前提として予定を立てようとする。希望的観測に従って生きているのだ。 「5分もあれば着くだろう」「この作業なら金曜までに行けるんじゃないかな」「本気を出せば半年で完成するさ」
だが、エッセンシャル思考の人は違う。思わぬことは起こるものだと知っているから、あらかじめ何かが起こることを想定して予定を立てる。万が一に備えてバッファをとり、予定外のことがあってもペースを取り戻せるようにしておくのだ。
リスクマネジメント戦略を立てるにあたって、5つの質問
①このプロジェクトにはどんなリスクがあるか?
②最悪の場合、どんなことになりうるか?
③周囲の人への影響はどのようなものがあるか?
④そのリスクは自分(会社)にとってどの程度の経済的負担となるか?
⑤リスクを減らすためにどのような投資をおこなうべきか?
この5つめの問いへの答えが、広い意味でのバッファとなる。
エッセンシャル思考の人は、すべてが思いどおりにはいかないことを知っている。未来が予測不可能であるという現実を受け入れている。だから、不測の事態が引き起こすダメージをできるだけ緩和するために、あらかじめバッファを計画に組み込んでおくのだ。
<書評>
勉強でも仕事でも、時間的な見積もりに失敗してしまったことが過去に何度もあります。試験前日の一夜漬けなんかはその典型的な例ですね。
例えば、明日、3科目のテストがあったとして、1番簡単に終わりそうだと思った1つ目の科目の勉強を始めてみる。すると思いのほか難しくて予想以上に時間を取られてしまう。2科目目の勉強に取り組んでいる途中で睡魔に襲われ、気がつくと深夜になっている。3科目目の勉強は満足にできていないままで、試験会場に向かう。
そして「あと1日早く取り掛かっていれば、こんなことにはならなかったのに、、」と帰りの電車の中て悔やむ。
この例え話は私の体験談ですが、大なり小なりこのような失敗を避けるためには、時間、お金、労力の事前の見積もりというのが、本当に大切です。
全体のボリューム感を見越して、計画を立てるのはもちろんなのですが、その計画にバッファとしての余裕を持たせておくこと。
不慣れな仕事や苦手な勉強であれば、余裕を持った計画をあらかじめ立てておくのは当然だと思います。ですが、慣れ親しんだいつもの仕事、いつもの通勤経路であっても、想定外の事態がいつ発生するかは分かりません。従ってこちらにもバッファを用意しておくのが賢明でしょう。
この本では、自分がその仕事をこなすのに必要だと見積もった時間の1.5倍の時間を事前に確保しておくことが勧められています。
仕事におけるプロジェクトや、個人での取り組みにおける不測の事態に備えるために、上記のリスクマネジメント戦略を立てるにあたっての5つの質問が役に立つと思いました。
ここでは、「4か月後の10月に資格試験を受ける」予定の私の取り組みで考えてみます。
1、このプロジェクトにはどんなリスクがあるか
・仕事や家事が忙しくて試験勉強が間に合わない。
・自分や家族が体調を崩して試験が受験できない。
2、最悪の場合、どんなことになりうるか
・試験に落ちて来年、再受験することになる。
・さらに時間とお金と労力の投資が必要になる。
3、周囲の人への影響はどのようなものがあるか。
・勉強時間が伸びる分、家族サービスができず、
迷惑をかける。
4、そのリスクは自分にとってどの程度の経済的負担となるか
・受験料や参考書代が余計にかかる。
5、リスクを減らすためにどのような投資をおこなうべきか
・試験日から逆算して、試験1週間前には勉強が
完了するような学習計画を立てる。
・苦手科目には多めの時間的バッファを用意して、
1番早めに勉強に取り組む。
・自分と家族の体調管理・健康に気をつける。
・早寝早起きの生活習慣を身につける。
・家族サービスの時間と自分の勉強時間の
メリハリをつける。
これは卑近な例ですが、こうやって事前に考えてみてバッファを用意して、さらに実際の行動にあたっては「徹底的に準備して」実行することで、失敗の確率をかなり下げられるのではないでしょうか。「うまくいかない」ことを前提に備えた上で、行動した方が良いということですね。そして、行動はできるだけ早めに。
もしかしたら、こちらの予想を遥かに超えた悪い状況というものも発生するかもしれませんが、それでも、何かのバッファを用意しておいた時と、何も用意していなかった時では、心理的な余裕はずいぶん違ってくるように思います。
何かのプロジェクトに取り掛かる時には、この5つの質問を使ってバッファを考えておく。それが、成果を出すための安全弁になってくれる気がします。
バッファを持たせるという考え方、早速取り入れていきたいと思います。
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