書評『指名される技術 六本木ホステスから盗んだ、稼ぐための仕事術』堀江貴文・斎藤由多加 著
<引用>
「共感」を獲得するには、そして維持するためにはどうしたらいいのか?それは自分を発信し続けることだと思います。そうすることでいつも自分を「思い出し」てもらう……。
思い出してもらう機会を繰り返し維持する、そのための「発信」です。
人に知られ、思い出されることを続けることで、いつしか身内意識を持ってもらう……。これが指名されるための技術です。
テレビ番組の司会者は自分の意見を語らずに、ゲストに話させながら番組を進行させていきます。
あなたも、クライアントにどんどん口を開かせればいい。毒舌だろうが愚痴だろうがとにかく喋らせる。うまく合いの手を入れ、話題を軌道修正しながら、主役が話したがっている話題へと引き戻す。そして、主役が本当に言いたいことをどんどんと暴露させる。
どんな客も、心の内は困ったことを抱えているものです。困っているから客なのです。彼らはみな、「こうしたい 」という目に見えない台本を抱えて生きています。それをなかなか人にうまく見せられず、時として自分でも何が書かれているか整理できないものです。
その引き出しを開けて、台本を演じさせてくれる息の合ったプロを客は常に探しています。
ですからその台本をしれっと読み取り、上手に料理するその「アレンジ」がプロの仕事人のキモということになるわけです。
息の合わない、アドリブができない相手に客はリピート(再指名)はしないものです。いかに合わせるか、そしてそれがどれだけの価値があるか、それを採点するのは、お金を払う「客」なのです。
どの職種でも、プロ中のプロというのは、相手の口から何かを引っ張り出す技術が卓越しているものです。不思議なもので司会進行が上手だと、話している客も自分の話が面白くなったと錯覚をする。それが聞き手の職人技だと気づかずに……。
そういう客は、またその人のところに戻ってくるものです。これこそが指名される技術の核です。
<書評>
指名されるためには、「情報発信」と「相手を主役にする」という2点が大切だということです。一つずつ見ていきましょう。
まずは「情報発信」から。古くからあるものとして、年賀状、暑中見舞いなどは、自分の近況を知らせるための情報発信です。お中元やお歳暮なども、親戚から届いたりすると、お礼の電話をかけたりします。その時に、それぞれの近況を伝え合ったりしますから、このような贈り物も情報発信だと言えそうです。
インターネットだと、Facebook やTwitter、Instagram などの投稿は、まさしく情報発信です。ブログやメルマガもそうですね。
単発で発信するのではなく、発信「し続ける」というところがポイントです。1回きりだと、それを見た相手も、だんだんその情報の発信者のことを忘れてしまうからです。
この辺りは、英単語を暗記する時などと全く同じ話だと思います。単語集を何度も勉強して、その単語を見る頻度が高くなるほど、試験中にそれを思い出せる確率が上がりますよね。
最初は見慣れぬ単語であっても、10回も、20回も繰り返し色々なところで見かけるうちに、段々と頭の中に刷り込まれてきます。そして、自分にとって「未知」の単語のグループから「既知」の、馴染みの単語のグループへと仲間入りを果たすことになります。
英単語の暗記と同じく、定期的に情報発信を行い、「思い出させ続ける」ことで、相手の記憶の中に自分のことを定着させていくことができます。
それによって相手から「そう言えばあの人がいた。あの人ならこの件に関しては詳しそうだ。ちょっと相談してみよう」というふうに、「その分野の専門家」として思い出して頂き、お声がけ頂けることになります。
繰り返しになりますが、大切なポイントは、発信「し続ける」ということです。情報の受け手から自分が必要とされる時が来るのは、明日なのか、1年後なのか、あるいは5年後に訪れるのかは分からないからです。
次に「相手を主役にする」ことについて。絶え間ない情報発信によって、相手から自分のことを思い出してもらい、相談を持ちかけられたとしましょう。
相談があるくらいだから、相手は困っています。おそらく、どうしたらいいか分からず、明確な答えや行動を求めてこられることが多いでしょう。
その時に、沢山「こうしたら良い」というアドバイスをしたくなっても、まずはグッとこらえることです。
何故かというと、相手の本当に満足する答えは、相手自身の中からしか出てこないからです。
もし、親切心からたくさんの実行可能なアドバイスをしたとしても、「〇〇さんに言われた通りにやったのに、うまくいかなかった」と後から言われてしまうことがあります。相手が他人の責任にしたがる人の場合は特にそうです。
相談をされる場合、相手は自身の本当に解決すべき問題点がどこにあるのか、明確に言語化できていない場合が多くあります。
そしてそこに私たちの唯一にして最大の出番があります。こちらから質問することで、相手の考えていること、不安や欲求を少しずつ引き出していくのです。
それによって、「これはこういうことですね?」「それはこういうことですね?」と確認を取りながら相手の渋滞した思考を交通整理していくのです。
でも、渋滞した交差点から抜け出すために、直進するのか、右折するのか、左折するのかを決定するのは、あくまでもドライバーである相談相手です。
私たちができることは、相手にできるだけ気持ちよく吐き出してもらうような場を提供することと、そして相手が成し遂げたい欲求に気付いてもらうことです。それが、ホストやファシリテーターとしての役割です。あくまで主役の補佐に、脇役に、黒子に徹します。
とても大事なことですが、意思決定と行動は相手の代わりに行うことはできません。ここは主役である相手が、これから舞台上で演じていくところです。
私たちは、舞台袖からスポットライトを浴びて華やかに輝くその姿を見て応援したり、逆に勇気づけられたりするわけです。
相手がスッキリして、それから前向きに行動する気持ちを取り戻してくれたら、それでこちらの役割としては大成功だと思うのです。そこからのフォローとサポートはまた別の話になってきますが、そのように相手に感じてもらえるようであれば、リピートも期待できると思います。
<今日の読書を行動に変えるための
個人的チャレンジシート>
1.この本を読んだ目的、ねらい
・多数の競合の中から自分を選んでもらうための考え方と方法を知る
2. 読んでよかったこと、感じたこと
・ 紹介されている事例に面白いものが多い
・プロとして身につける考え方、姿勢、行動の点で参考になることが多かった
3. この本を読んで、自分は今から何をするか
・情報発信を継続、拡大していく
・話す相手を主役にすることに徹する
4. 3か月後には何をするか、どうなっていたいか
・今よりも選ばれる回数が増えている
・お客様を励まし、その行動や成果によって、自分も勇気をもらい、自分の行動と成果が加速度的に増えている